オフィス移転を成功させるために一番最初に必要なことが「移転方針」を決めることです。移転方針を決めることで、今後のオフィス探しやオフィスデザイン選びも移転方針に従ってスムーズに決めることができます。
オフィス移転を進めるための方針
オフィス移転をするにあたって、移転方針を作成しましょう。移転方針とは、オフィス移転を進めるためのガイドラインです。オフィス移転は、単なる引越しではありません。会社の体制の見直しや業務効率化など、オフィス移転にはさまざまな目的や効果があります。
オフィス移転を決めるに至った経緯を整理し、移転方針という形で明確にしておくことで、オフィス移転を成功に導くことができます。オフィス移転の際には、まず、移転方針を定めましょう。
「なぜ、何のために」行うのか
移転方針では、オフィス移転の目的を明確にします。本来の業務もありますから、オフィス移転プロジェクトにだけ時間や経費をかけるわけにはいきません。オフィス移転は、時間や経費がかかっても、それ以上の効果がある場合にすべきものです。オフィス移転プロジェクトを進めるにあたって、何のために移転するのかをはっきりさせましょう。
オフィス移転をする理由として多いのは、今のオフィスが手狭になってしまったからということではないでしょうか?長らく業務を続けている間に、保管しなければならない書類も増えてきます。最近では個人情報の漏えいなど情報セキュリティに対する意識はかなり厳しくなっており事務所の管理体制を見直す企業も増えてきています。書類の保管が困難になっただけなら専用のスペースを借りることでも対処が可能ですし、例えば書類を電子化することで事務作業の軽減など「ワークスタイル改革」も可能です。
複数の選択肢の中からオフィス移転を選ぶのは、単に書類の保管場所が増える以上の効果があると考えるからでしょう。その効果を具体的にピックアップしてみます。
人員増加のためにオフィス移転を考えることもあるでしょう。この場合には、今後どれくらい人員を増やすということも視野に入れておかなければなりません。従業員の士気の向上やお客様にとってのアクセスの利便性のためにオフィス移転を考えることもあるはずです。このように、移転の目的をはっきりさせることで、物件探しやレイアウト作成がスムーズに進みます。
ポイント:移転方針として「なぜ」移転するのか、目的を明確にする。
「いつ」「どこへ」「どのように」行うのか
移転方針では、「いつ」オフィス移転をするかという移転日を定めます。オフィス物件の賃貸借契約では、解約予告は退去日の6ヵ月前までに行うとされているのが一般的です。引越しは、解約予告をした後、6ヵ月以内に行わなければなりません。新しいオフィスへの引越しが完了した後、今のオフィスの原状回復工事を行う場合には、移転日の後にも期間の余裕を持たせておく必要があります。なお、移転日が繁忙期に重ならないようにすることは、いうまでもありません。
「どこへ」移転するかという移転場所についても、おおまかに決めておきましょう。移転するエリアが決まらなければ、物件探しができません。移転の目的が明確になれば、移転場所の候補も絞ることができるでしょう。ただし、移転場所を具体的にし過ぎると、条件に合った物件がなかなか見つかりません。物件が見つからない場合に備えて、候補地をいくつかピックアップしておく方法もあります。また、この段階で一つのビルに候補を決めてしまうと仮にそのビルがダメだった場合に、移転計画そのものが停止になってしまうので、環境や利便性などを含めて複数エリアを候補に挙げておきましょう。
「どのようにして」移転するかという移転方法も決めておきましょう。オフィス移転の際には、専門のオフィス移転業者に依頼するのが一般的です。オフィス移転をサポートしてもらえる業者はたくさんありますから、どのようにして業者の選定をするかを考えておかなければなりません。インターネットで一括見積もりしてもらう方法もありますが、他社から紹介してもらう方法なども考えられます。オフィス移転の成否は業者によって変わるとも言えますから、業者選びには特に慎重になりましょう。
社内で共有するためのコンセプトを作成
オフィス移転の際には、コンセプト作りも大切になってきます。オフィス移転の目的を明確にしたところで、どんなオフィスにしたいかは人それぞれです。新しいオフィスのコンセプトを決めないと、デザインにも統一感がなくなってしまいます。
たとえば、従業員のモチベーションを上げるためには、おしゃれなオフィスにするという方法もあるでしょう。誰もが心地よく過ごせる空間にするために、観葉植物を置くなどして、自然を感じられるオフィスを目指すこともあると思います。オフィス移転によって業務効率化を図りたいなら、機能性を重視したスタイリッシュなオフィスがよいかもしれません。
新しいオフィスのコンセプトを作るときには、オフィス移転の目的のほか、業務の内容やターゲットとする顧客、従業員の年齢層なども考慮し、最適なものを考えましょう。最初にコンセプトを作成しておけば、移転プロジェクトの各過程において、コンセプトに沿った選択ができます。コンセプト作りは、移転作業の効率化に役立つということです。
もちろん、作成したコンセプトは、社内で共有することも忘れてはいけません。オフィス移転を成功させるには、社員が一丸となって取り組むものであることをしっかり認識しておきましょう。
会社の規模に応じてプロジェクトチームを発足
オフィス移転をするときには、移転プロジェクトを進めるためのプロジェクトチームを発足させる必要があります。オフィス移転は、単純な作業ではありません。複数のメンバーが知恵を出し合って、移転方針に従ったプロジェクトを遂行していくことが重要です。
会社の規模によっては、プロジェクトチームに何人もの従業員が参加するわけにはいかないこともあるでしょう。そのため、会社の規模に応じたプロジェクトチームを用意することになります。
各部門を横断できる人物の選定
オフィス移転のプロジェクトチームでは、各部門の業務の内容を詳しく把握しておかなければなりません。どのようなオフィスにしたいかは、働き方によって変わってくるからです。
オフィス移転の際には、各部門の要望を反映させる必要があります。そのためには、各部門から少なくとも1人は移転プロジェクトのメンバーに加わってもらうのが、最も手っ取り早い方法です。
会社の規模によっては、移転プロジェクトに多くの人員を割くことができないこともあるでしょう。各部門からメンバーを募れない場合には、各部門の業務について詳しい人物が中心になって移転プロジェクトを進める方法があります。勤務年数が長く、複数の部門を経験した人物を選びましょう。
初めての場合は研修も必要
オフィス移転が初めての場合には、どのようにプロジェクトを進めたらよいのかがわからないことがあります。オフィス移転プロジェクトの進め方について知りたい場合には、オフィス移転の研修を受けることも考えましょう。
オフィス移転のコンサルティングを行っている会社では、オフィス移転に関する研修やセミナーを行っていることがあります。オフィス移転の研修に参加すれば、オフィス移転プロジェクトの進め方のほか、成功例、失敗例などの情報を得られます。
また、移転プロジェクトのメンバーに対して、社内研修を行う必要もあるでしょう。オフィス移転は期限のあるプロジェクトです。期限までに無事オフィス移転を完了させるには、メンバー全員が知識を得た上でプロジェクトにとりかかることが重要になってきます。
中小企業の場合は社長が1人で行う場合も
オフィス移転プロジェクトのためには、専門のプロジェクトチームを発足させる必要があります。しかし、少人数の中小企業では、移転プロジェクトに十分な人員を充てることができません。会社の規模によっては、プロジェクトチームを作るのは困難なことがあります。プロジェクトチームを作ることが難しい中小企業では、社長1人が移転プロジェクトを進めざるを得ないでしょう。
社長1人で移転プロジェクトを進める場合、他の人と意見を調整する必要がなく、すぐに意思決定ができるというメリットがあります。一方で、社長が他の業務で手いっぱいになってしまい、移転プロジェクトが中断してしまうリスクもあります。従業員の協力が得られる体制を用意したり、オフィス移転業者のサポートを受けたりする工夫が必要でしょう。
プロジェクトチーム発足の注意点
プロジェクトチームは数が多すぎてもまとまらないので、各部門から人選し社員全体の意見を反映するために役職も管理職から若手社員まで広い範囲から人選することをおすすめします。
100人規模の会社では決裁権のある役員1名、プロジェクトリーダー1名(課長)、各部担当者3名(中堅・若手社員)、秘書・事務員1名のような構成が考えられます。
また、移転プロジェクトは実際に移転が完了するまで最低でも6カ月はかかります。移転期間中は通常業務の負担がかからないように、他の社員に作業を振り分けるなど負担を軽減する必要もあります。