更新日:2026年3月24日
「社員が自発的に集まるオフィスにしたい」「でも、内装費用にいくらかかるのか不安……」。2026年、ハイブリッドワークが定着した今、オフィス内装には「作業場所」以上の価値が求められています。
一方で、内装への投資は決して小さくありません。物件の状態や規模によっては数百万から数千万円に及ぶこともあり、計画を誤ると予算オーバーや工事のやり直しという事態を招くこともあります。
本記事では、オフィス仲介と内装支援のプロであるビルサクの視点から、2026年最新の坪単価相場から法規制の注意点、おしゃれなトレンド、コストを抑える「セットアップオフィス」という選択肢まで、一通り理解できるように体系的に解説します。
【2026年最新】オフィス内装費用の坪単価相場

内装工事の費用は、物件の現状(スケルトン・居抜き・通常賃貸)と希望するグレードによって大きく異なります。まずは物件状況別の坪単価感をつかんでおきましょう。
坪単価10〜20万円:標準的なオフィス(一般事務向け)
床・壁・天井の仕上げと照明・空調・間仕切りを一般的な仕様で整える、スタンダードなオフィス内装の坪単価は10〜20万円程度が目安です。バックオフィスや倉庫を除いた執務室として最低限の機能を持たせる場合の水準です。
20坪のオフィスであれば200万〜400万円、50坪なら500万〜1,000万円程度を見込んでおきましょう。OA機器(パソコン・複合機・LAN配線)は別途となるのが一般的です。
坪単価20〜40万円:デザイン・機能重視(ブランディング向け)
エントランスや会議室をこだわった仕上げにする、ガラスパーテーションを採用する、吸音材や特殊照明を取り入れるといったデザイン性・機能性を高めた内装になると、坪単価は20〜40万円の範囲に入ります。
採用ブランディングや来客への印象を重視する企業、クリエイティブ系・IT系の企業が選ぶことが多い水準です。50坪のオフィスであれば1,000万〜2,000万円程度が総額の目安になります。
なお、スケルトン物件(内装・設備がない骨組み状態から全面施工する場合)では、電気配線・空調設備の新設コストが加わるため、坪単価25〜40万円以上になるケースも多くあります。
坪単価5〜15万円:居抜き・リニューアル工事のコスト感
前テナントの内装・設備をそのまま活用できる居抜き物件や、既存オフィスの一部だけを改修するリニューアル工事では、坪単価を大幅に抑えられます。壁紙の張替えや間仕切りの追加程度であれば、坪単価5〜15万円の範囲で対応できることが多いです。
ただし、居抜き物件では前テナントのレイアウトをそのまま引き継ぐ形になるため、自社の働き方や動線に合わない場合、追加の改修費がかかることもあります。あくまでも初期費用を抑えるための選択肢として、内容の精査が必要です。
オフィス内装で失敗しないための「内装制限」と法規制
おしゃれなデザインを実現するためには、法規制の壁を正しく理解しておく必要があります。知らずに工事を進めると、完成後に消防署から指導が入ったり、ビルオーナーとのトラブルに発展したりするケースもあります。
消防法:天井まで仕切る際の感知器・スプリンクラー設置ルール
天井まで届く施工型パーテーションで個室(欄間クローズ)をつくる場合、消防法上その空間は「新しい部屋」として扱われます。この場合、新たな部屋ごとに火災報知器・スプリンクラー・排煙設備の設置が義務付けられるケースがあります。
工事着工の7日前までに、管轄の消防署へ「防火対象物工事計画届出書」を提出することも必要です。未届出や設備不備が発覚した場合、オフィスの使用停止や罰金という行政処分につながる可能性もあります。
コストを抑える方法として「欄間オープン」(パーテーション上部に開口部を設ける)があります。煙感知器の場合は1.8m以上×0.2m以上、熱感知器の場合はパーテーション幅の60%以上×高さ0.3m以上の開口を設けることで、感知器の増設が不要になるケースがあります(自治体や管轄消防署によって異なるため要確認)。
建築基準法:避難経路と不燃材料の重要性
建築基準法では、オフィス内の廊下幅についても規定があります。廊下の片側のみに部屋がある場合は1.2m以上、両側に部屋がある場合は1.6m以上の幅が必要です。パーテーションの設置によって廊下が狭くなりすぎないよう、設計段階から確認が必要です。
また、内装材の「不燃材料・準不燃材料・難燃材料」の使用基準も建築基準法で定められています。天井や壁の仕上げ材として可燃性の素材を使用すると法律に抵触する場合があるため、内装会社に確認しながら選定しましょう。
知っておきたい「ビル側」の管理規定とB工事・C工事の区分
テナントビルには「A工事・B工事・C工事」という工事区分があります。
・A工事:ビルオーナーが発注・費用負担する工事(共用部の躯体・設備など) ・B工事:ビルが指定する業者が施工し、費用はテナント負担(消防設備・空調幹線など) ・C工事:テナントが自由に業者を選べる工事(内装・間仕切りなど)
パーテーションの設置はC工事になることが多いですが、消防設備の移設・増設はB工事に分類されるのが一般的です。B工事はビル指定業者が施工するためコストが高くなりやすく、事前に確認しておかないと想定外の追加費用が発生します。工事前にビル管理会社に工事区分を確認し、テナント負担となるB工事の範囲を把握しておきましょう。
「出社したくなる」オフィスを作る3つの最新トレンド
内装の法規制と費用を把握したうえで、次に考えたいのが「どんな空間にするか」というデザインの方向性です。2026年、社員が自発的に出社したくなるオフィスを作るためのトレンドを3つ紹介します。
バイオフィリックデザイン:自然と調和する居心地の良い空間
バイオフィリックデザインとは、観葉植物・自然光・木材・石材など、自然の要素をオフィスに意図的に取り入れるデザイン手法です。人間には「自然とつながりたい」という本能的な欲求があるという「バイオフィリア理論」に基づいており、ウェルビーイング向上への効果が研究によって示されています。
国土交通省のデータでは、植物がある空間では植物がない場合と比較してストレス値が約11%低下するという結果も報告されています。観葉植物の配置や壁面緑化から始めて、自然光を最大限に活かした照明計画、木目調の素材使いといった要素を組み合わせることで、コストを抑えながらバイオフィリックな空間を実現できます。
音のグラデーション:Web会議と集中作業を両立させる吸音対策
オープンオフィスの最大の課題は「音」の問題です。Web会議の声が執務スペースに漏れる、周囲の会話が気になって集中できない——こうした問題を解決するために、空間ごとに「音の環境」を設計することが重要になっています。
具体的には、吸音パネルや吸音天井材の設置、フォンブース(防音個室ブース)の導入、BGMによるマスキング効果の活用などが有効です。重要なのは、完全に音を遮断するのではなく、エリアごとに「静かな集中ゾーン」「適度なにぎわいのあるコラボゾーン」「会話を気にせず話せる会議ゾーン」と音のグラデーションをつくることです。
マグネットスペース:部署を超えた交流を生むカフェ・ラウンジ
出社の主な目的が「対話・協働」にシフトした今、オフィスには「人を引き寄せる場所」が必要です。カフェカウンター・ラウンジソファ・ハイテーブルといった、業務とリフレッシュの中間にある「マグネットスペース」を設けることで、部署を超えた偶発的な会話が生まれやすくなります。
このエリアは面積当たりのコストが比較的高くなりがちですが、採用・定着・イノベーションへの波及効果を考えると、投資対効果の高い箇所です。エントランス近くや動線上の目立つ場所に配置することで、より多くの社員が自然に立ち寄るようになります。
コストと時間を賢く削る!「セットアップオフィス」という選択肢
内装工事を自分たちで手配する通常の方法とは別に、「セットアップオフィス」という選択肢があります。ビルサクが注目するこの物件タイプは、オフィス内装の課題を別のアプローチで解決する方法として、特にスタートアップや急成長企業に広がっています。
内装付き物件(セットアップ)のメリット・デメリット
セットアップオフィスとは、ビルオーナーが内装・什器・設備を整えた状態で貸し出すオフィス物件です。入居者は内装工事を自ら手配することなく、スムーズに業務を開始できます。
主なメリットは次のとおりです。
・初期費用の大幅削減:30坪のオフィスを通常内装で整える場合、300〜500万円程度の初期投資が必要ですが、セットアップオフィスではこれがほぼゼロになります。 ・入居までの工期短縮:通常の内装工事では打ち合わせから工事完了まで数ヶ月かかりますが、セットアップオフィスなら最短1ヶ月程度での入居が可能です。 ・おしゃれな内装が既製品で揃う:デザイナーズ仕様で仕上げられた物件も多く、採用ブランディングや来客への印象向上にそのまま活用できます。 ・退去時の原状回復不要:ビルオーナー負担で内装が整えられているため、退去時の原状回復工事コストが不要、または限定的になるケースが多いです。
一方でデメリットもあります。内装費用が月々の賃料に上乗せされるため、一般的な賃貸オフィスに比べて賃料が1.2〜1.7倍程度高くなる傾向があります。また、内装やレイアウトを大きく変更することは難しく、自社のブランドを強く反映したカスタム内装には向きません。
居抜き物件との違いと、どんな企業に向いているか
セットアップオフィスと混同されやすいのが「居抜き物件」です。両者の最大の違いは、内装工事を行った主体です。セットアップオフィスはビルオーナーが整備した新しい内装・什器であるのに対し、居抜き物件は前テナントが使用していた内装・設備がそのまま残っています。
居抜き物件は賃料が割高になりにくいというメリットがある反面、前テナントの内装が残っている分、自社の用途に合わない場合は追加改修が必要になったり、老朽化した設備が短期間で故障するリスクもあります。また、前テナントが負う原状回復義務を引き継ぐケースもあるため、契約内容の確認が欠かせません。
セットアップオフィスが特に向いているのは、移転・開設のスピードを優先したい企業、初期費用を抑えたい企業、入居期間が比較的短い(3〜5年以内)企業です。逆に、長期入居でトータルコストを重視する場合や、自社ブランドを内装で強く表現したい場合は、通常物件に自社仕様で内装を施す選択肢が有利になることがあります。
入居までのスピードと初期投資を最小限に抑える方法
セットアップオフィスをフル活用するには、以下の点を意識して物件を選ぶことが重要です。
・賃料と入居期間からトータルコストを試算する:初期費用がゼロでも、毎月の賃料差額が積み上がると数年後に一般物件より割高になる場合があります。3年・5年単位でのトータルコスト比較を必ず行いましょう。 ・ハーフセットアップ物件も選択肢に入れる:エントランスや会議室は施工済みで、執務スペースはある程度自由にレイアウトできる「ハーフセットアップ」という物件タイプも増えています。自社のこだわりを一部反映しつつ、工期とコストを抑えられる折衷案として有効です。 ・ビルサクに相談する:物件によってセットアップの仕様・賃料条件・カスタマイズの可否は異なります。豊富な物件情報を持つビルサクに相談することで、自社の条件に合った物件を効率的に見つけられます。
理想のオフィス内装を実現する5ステップ
内装計画を正しい順序で進めることで、予算超過や工事のやり直しを防げます。ビルサクが推奨するオフィス内装の進め方を5ステップで解説します。
ステップ1:目的(採用・効率・交流)の優先順位を決める
内装計画の出発点は「なぜ内装を見直すのか」を明確にすることです。採用力の強化、社員の集中力向上、部署間の交流促進——目的によって、重視すべきエリアと投資の配分が変わります。
社員へのアンケートで「現状のオフィスで困っていること」を洗い出しておくと、設計会社への共有もスムーズになります。
ステップ2:物件種別の選定(セットアップ vs 通常物件)
目的が決まったら、次に「どの物件タイプを選ぶか」を検討します。スピードとコストを重視するならセットアップオフィス、長期的にブランドを体現した空間を作るなら通常物件に自社内装という方向性で絞ります。物件の選定とデザインの方向性は連動しているため、切り離して考えないことが重要です。
ステップ3:信頼できるデザイン・内装会社の選定基準
内装会社は自社と同規模・同業種の施工実績があるかを必ず確認しましょう。ポートフォリオを見て、目指す雰囲気に近い事例があるかをチェックします。3社程度に見積もりを依頼し、価格だけでなく提案内容・工期・アフターサポートを比較することが選定の基本です。
ステップ4:レイアウト設計と法規チェックの同時進行
設計段階からビルオーナーへの工事申請内容、消防設備の移設・増設の必要性、廊下幅の基準を確認します。内装会社が消防法や建築基準法に詳しいかどうかも、選定のポイントの一つです。法規チェックを後回しにすると、完成間際に設計変更を迫られるリスクがあります。
ステップ5:見積もりの精査と追加費用リスクの排除
見積もりには「本体工事費」だけでなく、以下の費用が含まれているかを確認しましょう。
・設計・デザイン費(工事費総額の10〜20%が目安) ・付帯工事費(電気・空調・LAN・防災設備など) ・廃材処理費・搬入費 ・退去時の原状回復工事費(将来的なコストとして把握)
工事開始後の仕様変更は追加コストの最大要因です。図面確定前に詳細な打ち合わせを行い、変更はできる限り早い段階で伝えるようにしましょう。
まとめ
オフィス内装は、物件の状態・デザインのグレード・法規への対応によって費用が大きく変動します。本記事のポイントをまとめます。
・内装工事の坪単価は、スタンダードな仕様で10〜20万円、デザイン重視で20〜40万円、居抜き・リニューアルで5〜15万円が目安。スケルトン全面施工はさらに高くなる。 ・天井まで仕切る施工型パーテーションで個室を作る場合、消防法上の届け出と消防設備の増設が必要になるケースがある。工事の7日前までに消防署への届け出が必須。 ・ビル内の工事はA・B・C工事の区分があり、消防設備の移設はB工事(ビル指定業者施工・テナント費用負担)になることが多い。事前確認が不可欠。 ・2026年のトレンドはバイオフィリックデザイン・音のグラデーション・マグネットスペースの3つ。「出社したくなる空間」の設計が採用・定着に直結する。 ・セットアップオフィスは初期費用300〜500万円の削減と工期短縮が最大のメリット。ただし月額賃料が1.2〜1.7倍になるため、入居期間を考慮したトータルコストの試算が必要。 ・物件選定と内装設計は同時並行で進めることが、コストと時間の無駄を省く最善の方法。
理想のオフィスは、物件選びの段階から内装を考えることで実現します。ビルサクでは、オフィス仲介から内装相談まで一貫してサポートしています。移転・リニューアルをご検討の際はお気軽にご相談ください。